大学生の日常をちょっとした漫画にしつつ、ちょいちょい大事なことを伝えられればと思います。ちなみに漫画はコミPo!で作成しました。
【4コマ漫画】グラフマジックと有意差
「有意差があるとはいえない」も大事な結果
2つの群を比較した場合について言うと、「有意差がある」とは、厳密には「2つの群が同じである確率が極端に低い」ということになり、2つの群は何か違いがありそうということになります。統計的検定の結果、有意差が検出されなければ、「有意差があるとはいえない」ということになります。ただし、確率の問題でもあるため、「有意差がない」とまでは言えません。
さて、よく勘違いされることですが、「有意差があるとはいえない」という状態になった場合に、その研究を失敗だとか、論文にできないととらえる人がいます。しかし、そんなことはありません。想定通りに有意差があった場合は、確かに話がしやすいかもしれませんが、有意差が検出されなかった場合も結果は結果です。
どこにも有意差がみられなかった場合、それをネガティブデータととらえ、論文化せずに捨ててしまう人も少なくないようです。ですが、ネガティブデータを論文にすることは次のような意義があります。
- 世の中の他の研究者が、そのネガティブデータになりうる研究を繰り返さなくて済む
- しっかりした仮説を立てたうえでネガティブデータとなった場合、なぜ仮説どおりにならなかったのかを突き詰めると新たな研究課題が生まれる可能性がある
そのように考えると、ネガティブデータはとても貴重だし、しっかり考察する価値があります。
残念なことに、上述したように「ネガティブデータになったら研究失敗」という考えを持ってしまう人は少なくありません。学部生とか大学院生レベルだけではなく、大学教員レベルでもいるわけですね。大学教員レベルの人がそのような考えを持っていると、「ネガティブデータになったら研究失敗」という考えを学部生・大学院生に教え込んでしまうから問題が大きいわけです。
繰り返しになりますが、ネガティブデータは決して残念な結果ではありません。研究の基本に立ち返り、仮説をしっかり立てておけば、ネガティブデータであっても価値ある論文になります。
ちなみに研究結果が思いどおりのものになることはあまりないです。奇跡に近いです。もし思いどおりの結果になるようだったら、そもそも分かりきった当たり前のことをやってないかと疑った方が良いです。だからこそ、ネガティブデータを価値に変えられるスキルって大事ですよ。
研究不正
さて、もっとマズいのは無理やり有意差を出そうとして、研究不正に走ることですね。言うまでもないことですが最悪です。
研究不正には以下のものがあります(文部科学省「研究活動の不正行為等の定義」より引用)。
- 捏造・・・存在しないデータ、研究結果等を作成すること。
- 改ざん・・・研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。
- 盗用・・・他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。
日本では研究の道に進む大学院生は、論文を出していかないと未来が切り開けないですよね。そんななか「ネガティブデータは研究失敗」みたいな考えでいると、いつまでたっても論文はできません。結果、不正に走る可能性もあります。ちゃんと、ネガティブデータも報告する価値があるということを教えていかないとダメだと思います。
グラフの注意:グラフマジックとか詐欺グラフとか
グラフの作成には注意が必要です。4コマ漫画にあるのは、その例の1つです。漫画の例のように、本来あまり違いがないデータ同士なのに、変な位置から目盛りを開始したために、とても大きな違いがあるように見えたりします。印象がまったく異なります。
グラフは視覚的に情報が伝わりやすい分、誤解を与えるようなグラフだとそのまま誤った解釈をさせてしまいます。基本的に、縦軸はゼロを起点として作成した方が良いでしょう。
なお、エクセルなどで、グラフを作成した場合、ゼロ起点になっていなかったりするので、よく確認して目盛りを修正しましょう。
それで、もっとヒドイのはこうした誤解を意図的に与えようとするケースです。縦軸の目盛りを調整したり、横軸の各目盛りの範囲を調整したり、立体グラフを利用してグラフの印象を変えさせたりといろんなケースがあるようです。それらについては、グラフマジックとか詐欺グラフとかで調べると、いろいろ出てたりするので調べてみてほしいなと思います。
驚くのは、多くの人がみるテレビだったり、大きな企業のプレゼン資料で、そのようなグラフマジックやら詐欺グラフが使われているということです。グラフをみる側が、騙されないように注意する必要があります。