はじめに
卒業論文(以下、卒論)が何をするものかを説明します。
簡単に言えば、「問い」「客観的根拠」「問いの答え」という3つの要素についてまとめていくのですが、それだけで約20000字などになったりするわけです。大学等によって、30000字、40000字などもあるわけですが。
なぜなのでしょうか?
卒論では何をするのか?
卒論は論文の一種です。
論文は、研究内容とその成果をまとめたものと言えます。何のためにまとめるかというと「他者に伝えるため」です。
自己満足で終わって良いのではなく、誰かにその成果を伝えます。多くの研究の成果が集まって、理論が洗練されたり、問題解決につながったりします。そのために、論文という形で、研究成果を他者に伝えます。
したがって、「卒論では何をするのか」を理解するためには、「研究」が何なのかを知る必要があります。
研究とは何か?
卒論に関する定番の本が以下です。それによると、研究とは「答えが未知である問いを解決しようとすること」です。
「答えが未知である問い」とは、まだ誰も着手していない、あるいは解決していない問いであり、「自分で設定した問い」です。研究では、自分で問いを設定しなければなりません。
実社会では、様々な問題に直面しますが、「中心的な問題は何か」を自分でみつけないといけないわけです。卒論において、自分で問いを設定するのは、何か問題に直面したときに、中心的な問題を自分で見つけられるようにするためでもあります。
そのほか、卒論を何のためにやるのかについて、【4コマ漫画】卒論って何のためにやるんですか?で説明しているので、参考にしてみてください。また、卒論は、経済産業省で述べている社会人基礎力を育むことにもなります。
「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提唱しました。
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/
だからこそ、卒論にはしっかりと取り組んだ方が良いわけです。
ちょっと脱線しましたが、研究とは何かについて整理しましょう。以下は、私がTwitterやpixivに投稿している漫画「20,000字なんて書けません!」(p25)のワンシーンです。簡単に言えば、研究とは、ここに書かれているとおりです。
研究は、「自分で設定した問い」に対し、「客観的な根拠」をとおして、「問いの答え」を見つけ出すことということになります。「客観的な根拠」は、信憑性の高い情報だったり、データだったりします。
研究(あるいはそれをまとめた卒論)では、「問い」「客観的根拠」「問いの答え」が重要な要素となります。簡単に言えばこれだけです。
これだけなのですが、如何に、これらに説得力を持たせられるかということも大事なのです。例えば、以下の例をみてみましょう。
- 問い・・・新型コロナ感染拡大防止にはマスクが有効ではないか?
- 客観的根拠・・・マスクをしている場合とそうでない場合で感染率が違うことを示すようなデータ等で検証する
- 問いの答え・・・マスクは有効だった、あるいは有効ではなかった、という結論
しかし、説得力を持たせるということは、以下のようなことも説明していく必要があります。
- なぜ新型コロナに注目する必要があるのか
- なぜ感染拡大防止としてマスクに着目するのか
- 他の感染症ではどういう話になっているのか
- マスクをしている人としていない人をどうやって比較するのか
- 感染率はどのように算出されるのか
- それらのデータをどのように入手するのか
- いつの時期のデータにするつもりなのか
- どういう地域・範囲からのデータになるのか
- どんな分析をするつもりなのか
- 入手したとしてそのデータはこの研究でみようとしている内容に適しているのか
- 有効/有効でないの判断基準はどうなっているのか
- 有効/有効でないの結論が出たとしてそれは何の意味があるのか
- etc.
あげればキリがないほど、説明しなければならないことがでてきます。どこかで折り合いをつけなければいけない感じです。
「問い」「客観的根拠」「問いの答え」ということを言いたいだけなのに、20000字とか言われる理由がわかりましたでしょうか?
なお、説明をしていくと専門用語も出てくるので、その定義も必要だったりします。言葉の定義の必要性については、言葉の定義をしないとどんな問題が起こるかをまとめてみたにまとめています。
まとめ
「卒論」は研究内容をまとめたものです。また、研究やそれをまとめた卒論には、「問い」「客観的根拠」「問いの答え」という要素が必要です。「問い」は特定の問題について、自分で設定するものとなります。
卒論で言いたいことはシンプルなのに、説得力を持たせるためにいろんな説明をする必要があり、その結果、20000字という感じになってしまうわけです。